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北京+10
〜女性の人権の確立と脱軍事化・脱暴力〜
独立行政法人国立女性教育会館(NWEC)へ行って来ました!

担当: 山本佳世
11月12・13日「北京+10〜女性の人権の確立と脱軍事化・脱暴力〜」が開催されることを知り、埼玉県比企郡嵐山町にある独立行政法人国立女性教育会館(NWEC)に行ってきました。

1995年第4回世界女性会議が北京で開催されてから今年で10年目です。
その間、日本では女性を取り巻く状況は「男女共同参画基本法」とそれにもとづく基本計画がつくられるなどそれぞれの分野での法整備が整ってきました。
しかし、女性の社会参画・意思決定の度合いを計るジェンダーエンパワーメント指数(GEM)では70カ国中44位と先進国最下位とも言われています。
そして、憲法改悪の動きとあいまってジェンダーフリーバッシングやバックラッシュは激しさを増しています。
そのような状況の中、全国からたくさんの女性が集まり情報交換の場としてどのような議論がされるのか楽しみに参加しました。

初日は韓国女性運動を担ってきた鄭絃柏(チョン・ヒョンペク)さんより記念講演がありました。

韓国は日本より労働率のM字型が明確で厳しい軍事政権 下におかれ、儒教社会の影響の強い状況があります。

国連加盟も日本より遅く、雇用機会均等法の制定などは遅れましたが、男女平等の促進を定めた「女性発展基本法」を手始めに、女性省を設置し、DV法や女性差別禁止法、女性起業支援法、などの法整備を日本に先立って制定してきたことのお話がありました。


翌日は、22ある分科会の中から第4分科会

「実態調査を通じたマイノリティ女性による運動づくり」に入りました。


はじめに、進行役のIMADA(反差別国際運動)から分科会のねらいと議論の方向が提起されました。

「女性差別撤廃条約」に批准した国は、その国の取り組みの進捗状況を報告する義務があります。

しかし、2003年ニューヨークで開催された「国連女性差別撤廃委員会」の日本政府報告書には一般女性の統計は記載されているものの、マイノリティ女性のことはなんら報告がされていませんでした。

そこで政府報告書の問題点を指摘する取り組みとしてIMADA-JCマイノリティ女性に対する複合差別プロジェクトが中心となって被差別部落・アイヌ民族・沖縄出身・在日外国人・障がいをもつ人などマイノリティに属する女性がそれぞれの立場からカウンターレポートを用意提出し、審議の当日にはニューヨーク国連本部に赴き当事者の声を直接女性差別撤廃委員会に訴えました。


その結果、日本政府の次回の報告書にマイノリティ女性の統計を盛り込むようにと勧告が出されました。

今回、こうした経過の中でそれぞれの立場で自分達の手により実態調査に向けてのアンケート調査を実施しました。

そして、はじめてのマイノリティ女性によるマイノリティ女性のための実態調査を行なうことになり、

その実施にいたるまでの経緯とこれからの課題について報告、意見交換がされました。


はじめに部落解放同盟から2004年に鳥取県で開催した「部落解放全国女性集会」でアンケート調査を実施した経緯とこれからの運動の必要性の報告がありました。

次に、アプロ女性実態プロジェクトから今日の在日韓国人社会や、実態調査の集計の結果について報告があり、実態調査を実施したことで意識を高めることに繋がったこと、アイデンティティや「特別永住者」という地位の問題などの状況がだされました。

そして北海道ウタリ協会からアイヌ女性の実態の報告とこの実態調査に参加してからの活動の報告がありました。


私はこれまでの議論の中で、一口に女性と言っても、国や国籍、門地、民族、など様々な状況があり、これまでの女性運動にはそうした違いが「女性」というひとつのカテゴリーによって見えなくなっていたように思いました。


差別というのは個々に存在するのではなく複数の要素が複雑に絡み合って存在しています。

これからもマイノリティ女性の分科会をもち続け、「私たちが存在している」と言うことを訴え続け、マジョリティ側の女性が同じ女性の問題として重みを感じ、そして、マイノリティのネットワークを強め同じ女性同士、思いと課題を共有し繋がって行くことが必要だと感じました。

私たちは自分自身の問題には敏感ですが、他人や周りの問題は見落としたり無神経になっていたりします。

このような会議に参加することで、ほんのわずかながらもそれぞれの状況を知りマイノリティ女性がどのようにエンパワーメントしていくのか考えさせられた2日間でした。


用 語
ジェンダーフリーバッシング
制度的心理的障壁を外し、自由になることへの非難。

バックラッシュ
特定の社会現象に対する反対運動のこと。

ジェンダーエンパワーメント指数
女性が政治及び経済活動に参加し、意思決定に参加できるかどうかを測るもの。

M字型労働率
女性が結婚出産育児を契機に退職し、育児終了とともに再度労働市場に戻ってくる中断再就職という労働形態。

DV(ドメスティックバイオレンス)
配偶者や恋人からの精神的・経済的・肉体的暴力。

複合差別
いくつかの差別を同じ人が同時にこうむること。

マイノリティ
社会的少数派。人権問題・差別問題で被差別の立場に置かれている人たちのグループをいう。対語はマジョリティ。

カウンターレポート
条約審査に際し、政府がつくる報告書に対しNGO(非政府組織)がそれぞれの見方でつくるレポート。

アイデンティティ
自分が自分であるという感覚。

特別永住者
日韓併合政策によって朝鮮の人たちは日本国籍になった。しかし、戦後のそれぞれの国が独立した関係で日本在住の朝鮮の人たちは日本国籍を失った。このため特例措置によってそうした人たちとその子どもたちに永住権を与えたこと。

エンパワーメント
「力をつける」という意味で、経済的に自立する力、政治や経営に参画する力、国際社会で活躍する力など様々な場面で女性が判断力や行動力を培い、蓄えることをいう。


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